免責事項: この記事ではNative Instruments と直接関係のないサードパーティー製のツールについて言及しています。弊社では十分に検証をした上で情報を提供しておりますが、それらの機能性や安全性を保証するものではございませんのでご了承ください。
この記事ではTRAKTOR (SCRATCH) PRO 2 とAbleton Live をMIDIクロックで同期させる方法についてご案内します。この設定は、DJセットに独自の編集やトラックを追加したい場合、特に役立つものです。MIDIクロック同期を有効にすることによって、Ableton Live でクリップを起動した時、TRAKTOR のテンポを維持することができるようになります。この記事では3つのシナリオを想定し、ご案内していきます:
- 1台のMac上で動作しているTRAKTOR とAbleton Live を同期させる
- 1台のWindows 上で動作しているTRAKTOR とAbleton Live を同期させる
- 2台の別々のコンピュータ上で動作しているTRAKTOR とAbleton Live を同期させる
2台の別々のコンピュータ上で動作しているTRAKTOR とAbleton Live を同期させるには、下記のようなハードウェアが別途必要です:
- 2台のMIDIインターフェース。(サウンドカードによってはMIDIインターフェースが装備されているものがあります。この例では、TRAKTOR AUDIO 10 を使用しています。)
- MIDIケーブル。2台のMIDIインターフェースを接続するために使用します。
おすすめの設定は、TRAKTOR をMIDIクロックリーダーに、Ableton Live をMIDIクロックフォロワーにする方法です。 この設定では、グローバルテンポ(BPM) はTRAKTOR によって生成され、Abletonの再生やテンポはTRAKTOR からの同期信号に従います。
1. TRAKTOR でMIDIクロックを有効にする
- TRAKTOR のPreferences > MIDI Clock を開きます。
- MIDI Clock Settings にあるSend MIDI Clock にチェックを入れます。
2. Generic MIDI デバイスを追加する
TRAKTOR からAbleton Live (または同様のMIDI受信に該当するアプリケーション)にMIDIクロックを送信するには、TRAKTOR のController Manager でGeneric MIDI デバイスを作成する必要があります。このDevice 設定をおこなうことによって、Ableton Live と通信するためのMIDIポートを定義することが可能です。
- TRAKTOR のPreferences > Controller Manager を開きます。
- Device フィールドの下にあるAdd… ボタンをクリックし、ドロップダウンリストからGeneric MIDI を選択します。
3. Output Port を定義する
ここでは、セットアップの種類に応じて、Generic MIDI デバイスのOutputポートを定義する必要があります。
Mac OS X で同期のためのOutputポートを設定する
Out-Port フィールドをクリックし、ドロップダウンメニューからTraktor Virtual Output を選択します。
Windows で同期のためのOutputポートを設定する
- TRAKTORを終了します。
- 無料の仮想MIDIドライバ LoopBe1 のWebサイトにジャンプします。(こちらをクリック)
- ダウンロードページから、Download setuploopbe1.exe をダウンロードし、実行します。LoopBe1 がコンピュータにインストールされます。
- TRAKTOR を起動し、Controller Manager でDevice リストからGeneric MIDI マッピングを選択します。
- Out-Port フィールドをクリックし、ドロップダウンメニューからLoopBe Internal MIDI を選択します。
2台のコンピュータ間の同期設定
- TRAKTOR を終了します。
- TRAKTOR を実行しているコンピュータに、MIDIインターフェースを接続します。この例では、MIDIポートを装備している機器として、TRAKTOR AUDIO 10 を接続します。
- TRAKTOR を開き、Controller Manager のDevice リストより、Generic MIDI を選択します。
- Out-Port フィールドをクリックし、ご使用のMIDIインターフェースに該当するポート名を選択します。この例では、ドロップダウンリストからTraktor Audio 10 を選択しています。
4. MIDIクロック信号を送信する
次に、TRAKTOR のMaster Clock パネルで、MIDIクロックを送信する設定をおこないます。
- TRAKTOR 画面でFX Unit が表示されていることをご確認ください。
注意: FX Unit が表示されていない場合は、TRAKTOR 画面右上のレイアウトセレクターをクリックし、MixerまたはExtended どちらかを選択してください。
- Master Clock パネルを表示するため、FX Unit 1 の左側にあるメトロノームアイコンをクリックします。
- MASTER の下にあるAUTO ボタンが有効になっていないことをご確認ください。この状態では、MIDIクロック信号がMaster Clock から直接生成されます。これはMIDIクロック信号を安定して送信するために推奨される設定です。
注意: AUTO 機能を使用してTRAKTORで自動的にテンポマスターを選択したり、いずれかのデッキを手動でMASTER にすることもできます。マスタークロックテンポは現在のテンポマスターに従いますが、MIDIコントローラーやタイムコードコントロールを使用するなど、急激なテンポ変化を加えた場合、MIDIクロックの規格上、テンポが即座に追随できない場合があります。そのため、ここでは安定したテンポを生成させるために、AUTOではなくMaster Clock パネルでMASTERを設定し、デッキをSYNCさせる方法を推奨しています。
- Master Clock パネルのSENDセクションにある「Play / Pause」ボタン をクリックします。MIDIクロック信号を送信中は、このボタンが点灯します。
Master Clock パネルには、ご使用のニーズに合わせて同期を維持するためのいくつかの要素が含まれています:MIDIクロック信号の現在のテンポは、CLOCK セクションの中央に表示されています。+ または –ボタンをクリックする事でテンポを変更する事が出来ます。一時的なテンポベンドであれば<| または|> ボタンをクリックしてください。SEND セクションのSYNC ボタンは即座にMIDIクロック信号をリセットして再開させます。同期がずれてしまったときはSYNC ボタンをクリックして再度同期させてください。
5. Ableton Live でのMIDI同期設定
Mac OS X で同期のためのMIDIポートを設定する
- Live の Preferences(環境設定) > MIDI Sync メニューを開きます。
- Input にあるTraktor Virtual Output のSync(同期)をOn(オン)にします。
Windowsで同期のためのMIDIポートを設定する
- Live の Preferences(環境設定) > MIDI Sync メニューを開きます。
- Input にあるLoopBe Internal MIDI のSync(同期)をOn(オン)にします。
2台のコンピューター間で同期するためのMIDIポートを設定する
- MIDIクロックを送信しているコンピュータ(例:TRAKTOR が動作しているコンピュータ)のMIDIインターフェースMIDI Out と、MIDIクロックを受信するコンピュータ(例:Ableton Liveが動作しているコンピュータ)のMIDIインターフェースMIDI In を接続します。
- Live の Preferences(環境設定) > MIDI Sync メニューを開きます。
- MIDIインターフェースのInput のSync(同期)をOn(オン)にします。この例では、TRAKTOR AUDIO 10 を使用しています。このinputにおいてはSync(同期)のみが有効であることをご確認ください。
6. 外部同期を有効にする
Live のテンポセクション(画面左上)では、MIDIクロックを受信すると、黄色のインジケーターが点滅します: TRAKTOR から送信されるMIDIクロックとAbleton Live を同期させるには、EXT ボタンを有効にします。これで、Ableton Live はTRAKTOR のフォロワーとして動作します。
7. MIDI同期での再生
これでTRAKTOR とLive を同期させる準備ができました。以下に基本的なワークフローをご案内します。
オーディオファイルのテンポ検知
TRAKTOR とLive を同期して再生するには、両方のアプリケーションにおいて、オーディオのテンポ検知が正しく行われていることが前提となります。TRAKTORでは、テンポはトラックのアナライズ中に検出されます。トラックによっては、手動での調整が必要になります。TRAKTORのビートグリッドを設定方法に関する詳細はこちらの記事をご参照ください。Ableton Live では、セッションビューのスロット、またはアレンジメントビューにトラックをロードした時、オーディオファイルのテンポが自動的に検出されます。詳しくはLiveの説明書をご参照ください。
TRAKTOR での最初のステップ
TRAKTOR で再生を開始するには、以下の手順に従ってください:
- Master Clock panel のSEND セクションの「Play / Pause」が有効になっていることをご確認ください。
- TRAKTOR のデッキにトラックをロードします。
- デッキのSYNC を有効にします(Master Clock テンポに追随させる必要がある場合)。必要に応じて、Master Clock パネルのBPMを調整します。
- デッキのPLAY ボタンを押し、再生を開始します。
Live での最初のステップ
Live はMIDIクロックフォロワーとして動作しているので、再生ボタンは常に「再生」状態になります。あとは、セッションビューで個々のオーディオクリップをロードするだけです。この時点では、TRAKTOR のデッキの曲はすでに聞こえているはずです。
- セッションビューで、クリップスロットにループまたは曲をロードします。
- ロードしたクリップのクオンタイズ値を設定します。1 Bar をおすすめします。
- 再生しているTRAKTOR のタイミングにあわせて、任意の場所でクリップ再生をスタートします。
これで、Live で再生しているクリップとTRAKTOR で再生している曲が同期して聞こえるようになりました。
8. 設定の最適化
MIDIクロック同期は、安定したコンピュータの性能に依存するため、様々なシステム上の問題が同期信号のタイミングエラーを引き起こす可能性があります。これらは、TRAKTOR とLive との同期において、タイミングのずれの原因になることがあります。
- Windowsの場合、レイテンシー設定に問題がないかご確認ください。Windows におけるレイテンシー設定に関する詳細はこちらの記事をご参照ください。
- TRAKTOR とLive を異なる2台のコンピュータで同期している場合は、それぞれのオーディオインターフェースのレイテンシー、バッファーサイズを同じ値に設定してください。
TRAKTOR とAbleton の同期タイミングのずれを調整するには、下記の手順を実施してください:
- TRAKTORのPreferences でOutput RoutingのMixing Mode をInternalに設定してください。External で普段ご利用の場合でも、後で戻すことができますので、ここではInternal を選択してください。
- Output Monitorは、スピーカーに接続されたアウトプットを選択してください。External モードからInternal モードに切り替えた場合は、外部ミキサーのチャンネルに接続されているアウトプットを選択し、ミキサーチャンネルの音量が適宜上がっていることをご確認ください。設定後、Preferences を閉じます。
- TRAKTOR のMaster Clock Panelで、Tickボタンを有効にします。接続されたスピーカーを通して、TRAKTOR からクリック音が出力されます。
- Live でメトロノームを有効にします。接続されたスピーカーを通して、Live からもクリック音が出力されます。
- TRAKTOR のMaster Clock パネルで、Live に送信されている同期信号をリセットするために、SYNC ボタンを1回クリックします。
- Live のMIDI Clock Sync DelayとTRAKTOR のSending Offset機能を使用して、両方のプログラムの再生を調節します。ベストな結果が得られるよう、これらのオプションお試しください。TRAKTOR または Live どちらかのタイミングのずれを調整してください:
- Live の 環境設定 > MIDI Sync で、MIDI Input 名にある三角をクリックし、詳細設定を開きます。TRAKTOR からのクリック音とLive のクリック音が同期して聞こえるようにMIDIクロック同期ディレイスライダを調節してください。
- TRAKTOR では、Preferences > MIDI Clock メニューを開き、TRAKTOR からのクリック音とLive のクリック音が同期するようにSending Offset スライダを調節してください。
- Live の 環境設定 > MIDI Sync で、MIDI Input 名にある三角をクリックし、詳細設定を開きます。TRAKTOR からのクリック音とLive のクリック音が同期して聞こえるようにMIDIクロック同期ディレイスライダを調節してください。
タイミングが合わない場合は、TRAKTOR のMaster Clock 「Start / Pause」をオン/オフし、タイミングを合わせてみてください。最初は少しずれますが、Ableton Live のメトロノームが追いつき、TRAKTOR と同期します。